松本清張短編集Ⅰ 阿刀田高編集 '95 中央公論

2018.04.25(22:30)

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前回に引き続き阿刀田高編集版。
今回は今迄に何度か映画化やドラマ化になっているものが大半なので楽しみに。
映画化や二時間ドラマものだと清張の短編というは非常に作りやすいのでは?
そのままちょっと手直しして、そのまま脚本にしやすいだろうなと実感した。
全話ネタバレ↓


★張込み
殺人を犯し逃亡中の犯人が昔の女に会いに行くのではと、張込みをする刑事。
吝嗇家の夫と平平凡凡な暮らしをしているその女の日常を数日見守るにつけ
窓越しに感情移入をしていき、油断したところで犯人が現われ二人が出奔する。
犯人を無事に追い詰めるのだが、その女を今なら間に合う帰りなさいと。。。

★顔(画像化既視)
過去に殺人を犯した役者がチャンスを掴み売れていくに従い不安がもたげる。
映画で売れれば売れるほど、犯行前に唯一顔を見られた男に気付かれる可能性。
名前だけは憶えていたその男の動向を長年調べていたが、遂に始末をつけようと。
呼び出しはしたが不審を覚えた男は刑事も同行させていた。
ところが事に及ぶ前に偶然相席になるも、男は自分の顔など覚えていなかった。
安心して帰った犯人だったが、ふとした映画のひとコマから男が記憶を取り戻した。

★声(画像化既視)
電話交換手の女が過去に犯行中の犯人の声を覚えていた。
それは最近転職した夫が家に麻雀を打ちに呼んでいる同僚だった。
今更ながら犯人たちにおびき出されて殺されてしまったが夫はそれと気付かず煩悶。

★共犯者(画像化既視)
一夜限りで以後二度と会わないことを誓って二人で強盗し、それを元手に
現在は真っ当な仕事で成功を収めてきた。しかしいつ相手が尾羽打ち枯らして
当時のネタを脅迫してくるかもしれないとの不安から、長年人を雇い調査してきた。
遂に相手が事業に失敗したと知るや、強請の恐怖に震え始末をしてしまおうと企む。
ところが調査を依頼した男が、調査相手の一人がメインだと犯人の意図を特定し罠に。

★地方紙を買う女
強姦された男を心中と見せかけた偽装殺人を山梨で行った女が、都内で事件の様子を
知るために地方紙の購読を依頼する。なまじ連載小説が気に入ったのでという理由を
したためるも、物語の佳境で購読を打ち切ったため、その作家が怪しく思い調べていく。
今度は作家を始末しようと試みるも、露呈していることを理解し諦めてその場を去る。
同じ毒殺という方法を、作家に遺書をしたためたのち、自分に適用する。

★鬼畜(画像化既視)
言わずとしれたヒット作がこんなに短い短編だったとは。
ラストの石板のくだりで終了。殺されかけた子供との対面シーンはなかった。
長男を崖から投げ捨てる描写で「抛った(なげうった・ほうった)」という漢字が。
清張は旧漢字や、古い言い回しを使っているのが読んでいてとても楽しい。

★一年半待て(画像化既視)
失業してヒモ化した夫を持つ女が、保険の外交先に好きな男ができ求婚された。
しかし女はその男に「一年半待って」と。
夫は妻の知人の女と関係をもち、妻子に暴力を振るうようになり妻は夫を殺める。
正当防衛とも考えられ執行猶予2年で一審結審。これで幸せになるはずだった。
ところが求婚した男も聡明で、自分なりの推理をまとめ弁護人のところへ。。。

★捜査圏外の条件
未亡人となった妹と暮らす主人公。亡夫の墓参に山形へと出たきりで捜索願を出すと
石川県の温泉宿で急病で亡くなっていた。一緒にいた男は宿代すら払わず逃走。
それが上海帰りのリルを日頃唄っていた妹を知る妻子持ちの同僚と知る。
兄は復讐を誓うが完全犯罪のために、会社も辞めて7年もの年月を遠方にて待つ。
本話も常に相手の動向をスパイ的な元同僚の協力をもって追い続ける。
遂に機は熟し、宇部から東京に旅行がてら本懐を達成する。しかし上海帰りのリルが。。。

冒頭:殿とだけ書いて、名前が空白なのは、未だに宛先に迷っているからである。
ラスト:この文章の宛名を、捜査一課長とするか、弁護士の名にするか、或いは
誰にも宛てぬ遺書とするか、自分の迷いが数分の猶予の今の間でも決しかねている。
という文末がなんとも心地よい。


★カルネアデスの舟板
大学教授の覇権争い。世話をし凌駕されつつある教授を陥れようと愛人を使い
カルネアデスの舟板というテーマで、不合理を合理化し正当化したに過ぎない殺人(傷害致死)
であったが、女の対応と己の嫌悪感という不条理に抗えず破滅の道へ。

★白い闇
夫が出張に出たまま行方不明になり、夫の従兄弟と後を追っていく。
夫には女がおり、交渉決裂に終わるがその女もある日奥入瀬の山林で自殺していた。
女の兄が現われ、謝罪と共に経営する旅館に招待され、従兄弟と旅行に。
自殺したのは実は従兄弟の女であり、従兄弟は妻に焦がれていたため夫を殺害。
水面下で探偵的な働きをした女の兄が仕立てた炙り出しであった。


★二階
印刷屋の主人が長患いで妻は仕事と通院で苦労しているところに自宅療養となる。
介護のために雇った看護婦が実は夫の昔の恋人であった。全快する見込みもなく
二人は遺書を遺し心中してしまったが、女の業か妻はその遺書を燃やして処分し
並んで死んでいる女を動かし自分が夫の隣に入り自らも遺書をしたため服毒自殺。

★拐帯行
会社の金を横領(拐帯)し、心中をゴールに女と贅沢旅行に行く。
途中、品のいい中年夫婦に遭遇し憧れ、最後には一夜を二組で過ごすことに。
おかげで自首することになったが、肝心の中年夫婦こそ大金を横領し女は愛人。
警察に追われた宿にて服薬情死。


★日光中宮祠事件
戦後間もない頃の朝鮮人が起こした殺人放火事件を10年以上経っての再捜査。
古い署内で心中と片付けられたパワーバランスや、様々な関係者の居所・排他的な
朝鮮部落での困難な捜査を正に刑事が足で稼ぎ解決をしていく話。
 
面白かったわー
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