火と汐 松本清張 阿刀田高編集 '95 中央公論

2018.04.22(13:21)

元はオール読物に連載された1967年作品で、この中央公論社版に
「点と線」に抱き合わせの恰好で刊行されたコレクションシリーズ本。

1ページ目からなんとも言えぬ読み心地。
女の足元にチラリと見え隠れするスリップのほんの端の描写から
たった2ページほどでこの女の深層心理をさらけ出し覗き込む。
得も言われぬ味わい深い濃密な行間に読書心を一発で打ち抜かれた。
久し振りの清張だが、こんなに推理々々していたっけ?
そしてこんなにストーリーテラーだっけ?(当たり前w)
なんというかな ソフィティスケイトされているというか。

夫の知人と関係のある女が不倫旅行先から行方不明になり捜索もできず
数日後に自宅近くで遺体発見された不倫相手が逮捕。刑事が足で捜査。
夫が怪しいがヨットレースの真っ最中であり時空的に不可能。
しかしこれも清張節なので時刻表絡みで犯罪が立証可能となるのだが。。。
ラストは謎解きと共に駆け足で終わる。

返す返すも昨今読んでるディーヴァ―と比較せざるを得ないのだが
清張は無駄がない。余計な修飾語や形容詞がなく、ただただ文字数を
膨らませたいだけの文言は極力そぎ落とされている。
なのに緻密で濃厚な文章。シンプルに読み応えのある表現。

推理サスペンスゆえに、推論を推し進めていくにあたって紆余曲折は
あれども、真理と並行しての小どんでんもあり飽きさせず読後感が良い。
久し振りに読書の楽しみを味あわせてもらえた。ありがとうタラコ先生!


実は尼プラレンタルに引かれて「点と線」山形勲・高峰三枝子版を見て
(課金してから見たこと気付いた →前回は2009年
図書館で点と線を借りてきたわけだが、この「火と汐」は秀作であった。
ラストはやっつけでムリクリ簡単に終わらせてしまった感は否めないが
(阿刀田さん曰くは、このとき清張が忙しい時期だったせいでは?と)
こんなに古い作品でも新鮮にわくわく読めるというのは素晴らしい。
2作で350ページほど。ペロッと読めちゃったし中身もきちんと濃い。

また阿刀田高セレクションということで、巻末に編集エッセイがあるが
この阿刀田さんのあとがきがまた素晴らしい。
ただただ作者や作品を持ち上げることなく、こういう場所にしては
書きすぎるほどの批評w

長編連載小説だったために「点と線」では各章の終わり毎に〝引き〟の
技術をきちんと多用しているとのお話も興味深い。

そして本タイトルの「点と線」勿論面白い。
例えば心理描写を表す鳥飼刑事の入浴場面とか、これに限らずふとした
生活の一部分を非常にナチュラルに、シンプルに次の行動原理に繋げたり
ディーヴァーみたいな絵面だけの人物描写ではなく、そこには血と肉が
通っていることを納得させてくれる。

ディーヴァーに足りないのは間違いなくそこであり、今まで読んできた
日本人作家やキングにも当たり前に書き込まれていることである。
しかしそこまで広げると更に長編が膨らむのでオメーはそれでいいや>ディーヴァーw

ついでに借りてきたゼロの焦点も軽く読了

お見合い結婚で新婚旅行から間もなく夫が失踪して妻が調べるお話。
ドラマ版で見た記憶があるので犯人わかって読んだけど初見ならもっと面白いな。
これもある意味ではどんでん返しの連続。やはり戦後の混乱期を絡ませたお話は
悲哀や深みがそこはかとなく、しかししっかりと根底にあり重くていいなぁ。。。
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